1.1 その病気はどんな病気でしょうか?
若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎は慢性の関節の炎症(関節炎)、骨に腱や靭帯が付着する部位の炎症(付着部炎)を引き起こします。主に下肢、時には骨盤と椎体の関節(仙腸関節炎:臀部痛、椎体炎:背部痛)に影響します。若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎はHLAB27陽性者の場合はそうでない人より病気になりやすいのが特徴です。HLAB27は免疫細胞の表面に在る蛋白です。HLAB27陽性の人は顕著に関節炎を発症しますが、HLAB27の存在だけで病気の仕組みをすべて説明できるわけではありません。現在までに病気におけるHLAB27の正確な役割はわかっていません。しかし、反応性関節炎と言われる「胃腸炎或いは泌尿器感染症により関節炎が惹起される疾患」はかなり稀である事が知られています。若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎は成人発症の椎体炎と関連し、殆どの研究者はこの2つの疾患が同じ原因・素因により生じると信じています。若年性脊椎関節炎である子どもと若い人の殆どは、付着部関連関節炎或いは乾癬性関節炎として診断されています。「診療や治療の点では若年性脊椎関節炎、付着部関連関節炎、時には乾癬性関節炎はどれも同じ」である事は重要なポイントです。
1.2 どんな病気が若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎と呼ばれるのでしょうか?
前述のとおり、若年性脊椎関節炎は「軸性及び末梢関節の脊椎関節炎・強直性脊椎炎・未分化型脊椎関節炎・乾癬性関節炎・反応性関節炎・クローン病関連関節炎・潰瘍性大腸炎関連関節炎」を含み、それぞれ症状が重複しうる複数の病気に対する名前です。付着部関連関節炎と乾癬性関節炎はJIAの分類のなかの二つの異なる病気ですが、若年性脊椎関節炎に関連性があると言えます。
1.3 病気の起こりやすさはどのくらいでしょうか?
若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎は子どもの最も良くある慢性関節炎の一つで、女の子より男の子で多く見られます。世界の地域によっては子どもの慢性関節炎の30%を占めます。殆どの場合、初めの症状は6歳頃に出現します。若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎患者の大多数(85%にも達する)はHLA-B27陽性ですので、おとなの脊椎関節炎や子どもの若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎の起こりやすさは、一般の人やある特定の家系においても、そのHLA-B27陽性者の頻度に影響されます。
1.4 病気の原因は何でしょうか?
若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎の原因はわかっていません。しかしながら遺伝による起こりやすさは関係し、殆どの患者さんはHLA-B27の遺伝や他の幾つかの遺伝が影響しています。現在では病気と関連しているHLA-B27分子(HLA-B27を有する人口の99%はそうでない)が適切に合成されず、細胞やその産物(主に炎症物質の前駆体)に働きかける時に疾患の引き金となると考えられています。しかしながら、HLA-B27は病気の原因ではなくて、起こりやすくなる原因のひとつに過ぎないのです。
1.5 病気は遺伝するのでしょうか?
HLA-B27と他の複数の遺伝素因が、若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎のかかりやすさに関係します。加えて患者さんの20%近くでは兄弟・父母・祖父母の中に患者がいる事がわかっています。つまり、若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎にはなりやすい家系があります。しかし、若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎が遺伝疾患とは言えません。HLA –B27陽性者の僅か1%しか発病せず、99%は発病しないからです。そのうえ、遺伝素因は民族ごとに異なります。
1.6 病気は予防できるのでしょうか?
疾患の原因が未だ解明されていないため、予防は不可能です。若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎の徴候を持たない兄弟や親族のHLAB27を調べる事は役に立たないでしょう。
1.7 病気は感染するのでしょうか?
若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎は感染する病気ではありませんが、細菌やウイルスが病気の引き金になったと思われるケースはあります。加えて言えば、もし同時に同じ細菌に感染しても全ての人が若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎を発症する訳ではないのです。
1.8 主な症状は何でしょうか?
若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎の特徴
関節炎
最も起こりやすい症状は関節の痛み・腫れ・動きにくさです。
多くの子どもの患者さんで足の少関節炎を認めます。少関節炎とは4つより少ない関節の関節炎を意味します。慢性疾患が進行すると多関節炎を呈することもあります。多関節炎とは5つより多い関節の関節炎を意味します。症状が出る関節は膝・足首・中足部・股関節が多く、足の小関節には少ないです。
一部の子どもの患者さんでは腕の関節、特に肩に関節炎が起こります。
腱付着部炎
腱付着部炎、つまり腱や靭帯が骨へ付着する部位の炎症は子どもの脊椎関節炎/付着部関連関節炎において2番目に多い症状です。しばしば腱付着部炎は踵部(かかと)・中足部(足の甲のあたり)・膝周囲に局在します。最も多い訴えは踵部痛、中足部の腫れと膝の痛みです。腱付着部の慢性炎症は踵部の痛みの原因となる「骨の過成長」を引き起こします。
仙腸関節炎
仙腸関節炎は骨盤(腰の骨)の後ろ側にある仙腸関節の炎症です。それは小児期に発症することはまれであり、関節炎が生じて5~10年後に現れることがほとんどです。
最も頻度の高い症状は左右いずれかの臀部痛です。
背中の痛み;脊椎関節炎
背骨の症状は、発症時に見られる事はきわめて稀です。一部の小児では遅れて現れることも事もあります。最も起こりやすい症状として、夜間の背中の痛み、朝のこわばり、動きにくさがあります。背中の痛みはしばしば頚の痛みを伴い、まれに胸の痛みを伴います。病気が骨の過成長をもたらし、一部の患者さんでは発症後の長い年月の間に椎体(背骨の骨)同士が結合します。それゆえ、小児期には殆ど観察されません。
目の合併症
急性前部ぶどう膜炎は虹彩(黒目の部分)の炎症です。少ない合併症ではありますが、患者さんの1/3が病気の間に一度あるいは数度かかります。急性前部ぶどう膜炎は眼痛・発赤・霧視(目がかすんで見える)として数週間症状を示します。通常一度にかかるのは片眼ですが、繰り返すこともあります。眼科医による速やかな治療が必要です。このタイプのぶどう膜炎は、抗核抗体陽性で少関節炎の女の子に認められるものとは異なります。
皮膚の合併症
若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎の子どもの患者さんの一部は、乾癬の症状が現れるかもしれません。このような場合は、腱付着部炎としての分類が乾癬性関節炎に変更されます。乾癬は主に肘や膝に皮膚の鱗屑(魚のうろこの様な症状)を呈する慢性の皮膚の病気です。皮膚症状は関節症状により数年前に現れるかもしれません。患者さんによっては関節症状が皮膚症状より数年間先に現れます。
消化管(胃腸)の合併症
クローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患にかかった子どもの一部は脊椎関節炎を合併します。付着部関連関節炎は徴候として炎症性腸疾患を含むわけではありません。一部の子どもでは消化管の炎症が乏しい一方で関節症状が強いためそれに対する治療を行います。
1.9 病気は全ての子どもで同じ症状でしょうか?
病気の現れ方は幅広く様々です。一部の子どもでは症状が軽く病気の期間が短いこともありますが、別の患児では症状が重く罹病期間が長い事もあります。このように、多くは一関節(例えば膝関節)に数週間症状がでるだけでその後再発しないのに対し、複数の関節・腱付着部・脊椎・仙腸関節に長期間症状が出る子どももいます。
1.10 この病気は子どもとおとなで異なるのでしょうか?
若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎の初めの症状はおとなの脊椎関節炎の症状とは異なります。しかしほとんどのデータは子どもとおとなのいずれで発症しても同じ病気である事を示しています。末梢関節障害はしばしば小児期に始まり、おとなでは体軸関節(脊椎・仙腸関節)の障害が多い事と対照的です。小児期発症の場合は病気が重い事が多いと言えます。
2.1 どのようにして診断をつけられるのでしょうか?
16歳になる前に発症し関節炎が6週間以上持続き、特徴が上に述べたものと同じ場合に(定義や臨床徴候をみて)、医師は若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎と診断します。若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎の診断は特徴的な症状と画像検査に基づいて行われます。当然のことながら、小児リウマチ医か子どもの患者さんの経験豊富なリウマチ医による治療や経過観察を受ける事が望ましいです。
2.2 重要な検査は何でしょうか
HLA B27が陽性であることは若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎の診断に役立ち、特に一つの症状しかない場合の診断に役立ちます。HLA B27陽性者のうち1%未満しか脊椎関節炎を発症せず、地域差はあるものの全人口の中でHLA B27陽性者は12%にも達する事を知っておくことは非常に重要です。ほとんどの子どもやおとなの患者さんは何らかのスポーツをしており、若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎の初発部位に近いところを痛めてしまうかもしれない事も知っておくべきです。それゆえ、重要なのはHLA B27陽性そのものでなく、HLA B27と若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎に特徴的な症状の出現が関連する事です。
赤血球沈降速度(ESR)やCRPのような血液の検査は炎症性の病気の勢いに関して情報を与えてくれます。もちろん検査よりも診察が大切ですが、検査は診療において役立ちます。また血液の検査は起こりうる心配な事(血球・肝機能・腎機能の変化)をチェックするのにも用いられます。
X線検査は病気の進行を把握し病気による関節障害の評価に役立ちます。しかし、X線検査の価値は子どもの若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎では限定的です。殆どの子どもではX線検査の結果は正常であり、病気による関節と付着部の早い時期の炎症を見つけるには超音波検査かMRIが必要です。MRIは仙腸関節や脊椎の炎症について放射線を浴びずに検査できます。パワードプラシグナルを用いる関節超音波検査では末梢関節炎と腱付着部炎の有無を知る事ができ、そしてその重症度を知る為の良い情報を得る事が出来ます。
2.3 病気は治療可能でしょうか、治るのでしょうか?
残念ながら、病気の原因が不明であるため若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎を完治させる治療方法はまだありません。しかし現在推奨される治療は病気の勢いを抑えて足の関節のダメージを抑える事ができます。
2.4 どんな治療法があるのでしょうか?
治療法は主に薬剤と理学療法(関節機能を保ち変形を防ぐ事が期待できる)が基本となります。その国で許可された薬と薬の使い方を用いて治療が行われます。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
これらの薬は症状を和らげるための薬です。子どもで広く用いられるのはナプロキセン、ジクロフェナク、イブプロフェンと言う薬です。通常、体への負担が少ない薬です。もっとも起こりやすい副作用は胃腸障害ですが、子どもでは実際にはまれです。NSAIDs複数の併用はあまり勧められません、無効な場合やあるいは副作用が出た場合に別のNSAIDsに切り替える事は必要かも知れません。
コルチコステロイド(ステロイドの一種)
症状が重い子どもに対して短期間使用されます。ステロイドの点眼薬が急性前部ぶどう膜炎に使用されます。もっと重症な場合、眼球周囲注射やステロイド全身投与が必要となります。関節炎や腱付着部炎にステロイドを処方する場合、若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎への有効性や安全性に関する十分な研究がない事を理解しておく事が大切です。そのため、専門家の助言に基づいて処方される例もあります。
他の治療について
スルファサラジン
この薬は子どもの末梢関節病変でNSAIDsやステロイド局所注射を十分に行なっても治療が効かない場合に使用されます。スルファサラジンは、それまでのNSAIDを継続しながら追加しますが、その効果が明らかになるのは数週あるいは数ヶ月後です。子どもにおける有効性は、限られた証拠しか存在しません。同様に、広く使用されているにも関わらず、メトトレキサート・レフルノミド・抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン)など他の薬についても、若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎に有効であるという明らかな証拠は存まだ在しません。
生物学的製剤
生物学的製剤の一つである抗TNF製剤は、炎症に対する目覚ましい有効性があるため、発症したら早期に使用する事が勧められています。これらの薬剤の有効性と安全性について調べた幾つかの研究は、重症の若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎に対する使用を勧めています。これらの研究成果は保健当局に提出され、その使用の許可が待たれている所です。欧州の幾つかの国では抗TNF薬は既に子どもでの使用が許可されています*。
*日本ではおとなの脊椎関節炎や乾癬関連関節炎で既に許可されています。
関節内注射療法
関節内注射療法は、症状のある関節が1個あるいは少数で、拘縮が持続して変形を生じる可能性がある時に行われます。一般的に長時間作用型のステロイドが使用されます。子どもに使われる場合は入院して安全な条件において眠らせてから行う事が勧められます。
整形外科的手術療法
外科的手術の主な適応は、重篤な障害を受けた関節、特に股関節の置換です。改良された薬物療法のおかげで、外科手術の必要性は減少しています。
理学療法
理学療法は治療の重要な部分をなします。それは早期からまた通常の治療として、関節可動域保持・筋肉の発達と強化・関節変形防止を目的として開始されるべきです。更に、もし体軸関節の障害が優位であるなら、脊椎運動と呼吸に関するエクササイズ(運動療法)は必須です。
薬物治療の副作用は何でしょうか?
若年性脊椎関節炎/付着部関連関節炎の治療では、通常、体にとって負担が少ない薬剤が使われます。
消化管障害は非ステロイド系抗炎症薬(
NSAIDs)で最も多い副作用ですが(なので食事と共に摂取されるべき)、子どもではおとなより少ないとされています。NSAIDsは肝酵素の検査値を悪くすることがありますが、アスピリンによる副作用の確率よりまれです。
スルファサラジン はとても安全な薬剤と考えられています。最も良く起こる副作用は胃腸障害・肝酵素値上昇・白血球減少・皮疹です。副作用のチェックのためには、定期的な血液検査が必要です。
ステロイドを多い量で長期間使うと、成長障害や骨粗しょう症など色々な良くない出来事を引き起こすことがあります。食欲を亢進させ肥満を起こすこともあります。カロリーを摂りすぎないように気をつける事が大切です。
生物学的製剤 (抗TNF製剤)は、しばしば感染症を引き起こします。使い始める前に結核の検査は必須です。現在までに悪性疾患(癌など)を増加させるという証拠はありません(一部のおとなの皮膚癌を除いて)。
2.6 治療をどのくらいの間続けるべきでしょうか?
症状や病気の活動性が続いている間は、治療を継続すべきです。病気が続く期間は予想できません。一部の患者さんでは関節炎にNSAIDsが良く効きます。これらの患者さんでは数か月以内に治療を中止できることもあります。病気の期間が長く勢いが強い患者さんでは、スルファサラジンや他の薬剤が数年間必要となります。長期間、完全に病気の勢いがない状態を維持できれば薬剤を減らして中止出来るかもしれません。
2.7 その他の治療はあるのでしょうか?
数多くの代替治療が存在し、患者さんや家族に混乱を引き起こしています。効果が証明された治療が少ないことや費用・時間・子どもへの負担を考えるべきで、これらの治療を用いる際は効果と危険性の両方を考えて慎重に判断するべきです。もしあなたが代替治療を調べたいなら、あなたを担当している小児リウマチ専門医と十分相談をしてください。一部の代替治療は従来の通常の治療の邪魔をする可能性があります。殆どの医師はあなたに医学的なアドバイスをくれるでしょう。既に通常の治療をしている方は処方されている薬を医師の許可なしに止めないことが重要です。病気をコントロールし続けるのに治療薬が必要な場合、もし病気がまだ落ち着いていないとしたら薬をやめることは非常に危険です。どうか主治医と相談をしてください。
2.8 どのくらい長く病気が続くのでしょうか?病気が続いた後の結果はどうなるのでしょうか?
病気の経過は患者さんごとに違います。一部の患者さんでは関節炎が治療により速やかに消失します。ほかの患者さんでは周期的に寛解と悪化を繰り返すことがあります。患者さんによっては関節炎が持続するかもしれません。大多数の患者さんでは初期の症状は末梢関節炎と腱付着部炎に限定しています。一部の子ども或いはおとなの患者は病気が進行すると仙腸関節や脊椎の障害を起こします。長引く末梢関節炎及び脊椎障害がある患者は年齢を重ねて後に関節破壊が起こる危険が高いですが、初期には続いた後の予測をする事はできません。最善の治療は、病気が続いた後の結果を良くする事が期待出来ます。
3.1 病気が子どもや家族の生活にどのように影響するのでしょうか?
活動性関節炎がある間、殆どの子どもは日常生活への制限を余儀なくされます。足に罹患する事が多いので、しばしば徒歩やスポーツなどが影響されます。子どもを支え「自立し積極的に行動する」様に勇気づける両親の前向きな姿勢が、病気の困難を克服し、友達とうまく付き合い自立した個性を育てる事のために非常に重要です。もし家族が重荷に耐えられず病気への対応に困難を感じるなら、心理的な支援が必要です。両親はエクササイズ(運動療法)をする際に子どもを支え、薬物療法を続ける際に励ますべきでしょう。
3.2 学校生活はどうでしょうか?
学校生活で問題となるいくつかの点としては、歩行障害、疲れやすさ、痛み、こわばりなどがあります。子どもが教員の助けを必要としている事を説明しておく事が重要です。学校生活では適正な机に座り定期的に体を動かす事が関節のこわばりを避けるために必要です。可能であれば、子どもは体育の授業に参加すべきです。スポーツに関して言えば、いろいろな配慮がなされたうえで評価を受けるべきでしょう。一旦病気の状態が良くなれば他の子と同じように競技に参加する事をためらうべきではありません。
子どもにおける学校は、おとなにおける仕事と同じで子どもが独立した生産的な人間になる事を学ぶ場所です。両親と教師は、勉強で良い成績をとるだけでなく、他の子どもやおとなから受け入れられ認められる事を目標として、子どもが普通に学校活動に参加できるよう力を尽くすべきです。
3.3 スポーツはどうすべきでしょうか
全ての健康な子どもにとってスポーツは毎日の重要な日課です。関節に機械的負担を与えるスポーツについては止めるか最小限に留め、水泳や自転車に乗るような運動をしましょう。
3.4 食事はどうしたらよいでしょうか?
食事が病気に影響するという証拠はありません。基本的に子どもは年齢に応じたバランスの良い栄養を摂るべきでしょう。ステロイドを投与されている子どもは、薬剤による食欲亢進があるため食べ過ぎに気をつけるべきです。
3.5 気候が病気に影響を与えるのでしょうか?
気候が病気の症状に影響するという明らかな証拠はありません。
3.6 病気の子どもはワクチンを接種できるでしょうか?
殆どの患者さんはNSAIDsやスルファサラジンで治療をしているので普通にワクチンを受けることが可能です。多い量のステロイドや生物学的製剤で治療をしている患者は、生ワクチン(麻疹、風疹、ムンプス、ポリオ[セービンワクチン]など)は回避するべきです。しかし、免疫力が減弱すると感染症が脅威になるため、それらのワクチンは延期してもいずれ行うべきです。病原体そのものを含まないが感染性タンパク質を含むワクチン(破傷風菌、ジフテリア菌、ポリオ[ソークワクチン]、B型肝炎、百日咳菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、髄膜炎菌など)を接種することは可能です。ただ理論的には、薬により免疫抑制がかかっているのでワクチンの効果を減弱ないし消失させることはあり得ます。
3.7 性生活、妊娠、避妊に関してはどうでしょうか?
病気によりセックスや妊娠が制限されることはありません。しかし、患者さんが薬を使っている場合は赤ちゃんに影響がないか十分な注意が必要です。体質が遺伝するとしても子作りを避ける理由はないでしょう。病気が致死的なものではないし、体質が遺伝したとしても病気を発症するとは限らないのですから。
3.8 病気の子どもはおとなになれば通常の生活を送れるのでしょうか?
この事は治療の主な達成目標であり、大多数の患者さんは達成できる可能性があります。近年、子どものこれらの病気に対する治療は劇的に良くなりました。薬物治療とリハビリを行う事でほとんどの患者さんで関節のダメージを防ぐことが可能になっています。