MAJEED症候群 


版 2016
diagnosis
treatment
causes
Majeed Syndrome
MAJEED症候群
Majeed症候群は稀な遺伝性の病気です。この病気の子どもには、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、先天性赤血球生成不全性貧血(CDA)、および炎症性皮膚疾患が認められます。 1
evidence-based
consensus opinion
2016
PRINTO PReS
1.MAJEED症候群とはどんな病気ですか?
2.診断と治療
3.日常生活



1.MAJEED症候群とはどんな病気ですか?

1.1どのような病気ですか?
Majeed症候群は稀な遺伝性の病気です。この病気の子どもには、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、先天性赤血球生成不全性貧血(CDA)、および炎症性皮膚疾患が認められます。

1.2患者の数はどのぐらいですか?
非常に稀な病気で、中東(ヨルダン、トルコ)の数家系にしか認められません。正確な有病率は100万人に1人以下と考えられています。

1.3病気の原因は何ですか?
Lipin2というタンパク質をコードしている18番染色体短腕上にあるLPIN2という遺伝子の変異により生じます。このタンパク質は脂肪の処理(脂質代謝)に関わっていると考えられていますが、Majeed症候群の患者では脂質の異常は認められていません。
Lipin2は炎症のコントロールや細胞分裂にも関連していると考えられています。
LPIN2遺伝子の疾患関連変異はlipin2の構造と機能を変化させます。しかし、これらの遺伝子の変化がなぜMajeed症候群において骨病変や貧血、皮膚の炎症を引き起こすかについては明らかになっていません。

1.4 遺伝しますか?
この病気の遺伝形式は常染色体劣性遺伝(発症に性差はなく、両親が病気に罹患している必要はない事を意味します)です。Majeed症候群に罹患するには、母親から引き継いだ1つの遺伝子と、父親から引き継いだもう1つの遺伝子の合計2つの遺伝子に異常が必要となります。よって、両親はともに保因者(保因者とは1つの遺伝子異常を持っているが病気を発症していない)であり、患者ではありません。保因者は通常病気の徴候や症状は呈しませんが、一部の患児の両親は乾癬という炎症性皮膚疾患を発症しています。Majeed症候群の子どもがいる場合に次子がMajeed症候群を発症する可能性は25%であり、出生前診断が可能です。

1.5なぜ私の子どもはこの病気にかかったのでしょうか?防ぐ方法はないのでしょうか?
お子さんがMajeed症候群であるのは、Majeed症候群を来す遺伝子異常をもって生まれたためです。

1.6他人へ伝染しますか?
伝染しません。

1.7どういう症状が出ますか?
慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、先天性赤血球生成不全性貧血(CDA)、及び炎症性皮膚疾患がMajeed症候群に特徴的な症状です。Majeed症候群で認められるCRMOは、孤発性のCRMOと異なり発症がより幼少で(乳児期)、発作がより頻回で、寛解は稀で短期間であり、恐らく生涯にわたって続くため成長障害や関節拘縮が認められる点です。先天性赤血球生成不全性貧血(CDA)は末梢血と骨髄に小赤血球症を認めることが特徴です。その重症度はさまざまであり、気づかない程度の軽度のものから輸血依存性のものまであります。炎症性皮膚疾患としてはSweet症候群が特徴的ですが、皮膚膿疱症が認められる場合もあります。

1.8 合併症としてどのようなものがありますか?
CRMOは成長障害や拘縮と呼ばれる関節の変形などを来たし、関節の可動域が制限されます。貧血により倦怠感(疲労感)や衰弱、蒼白な肌や息切れなどの症状が出現することがあります。先天性赤血球生成不全性貧血の合併症は程度の軽いものから重篤なものまであります。

1.9症状はどの子でも同じですか?
この病気は非常に稀な病気なので、臨床像の多彩さについては殆ど知られていません。しかし、症状の重篤さはお子さんによって異なり、臨床像も多様となり得ます。

1.10この病気は小児と成人で違いはありますか?
この病気の自然経過については殆ど知られていませんが、一般的に、成人症例は合併症による障害がひどくなります。

2.診断と治療

2.1どのように診断しますか?
臨床症状に基づいてこの病気を疑い、確定診断は遺伝子検査で行う必要があります。診断は、患者が両親からそれぞれ1つずつ、計2つの疾患関連変異を持っている場合に確定します。ただし、遺伝子解析はすべての3次医療機関で施行可能なわけではありません。

2.2検査で重要なものは何ですか?
赤血球沈降速度(ESR)、C反応性蛋白(CRP)、血算、フィブリノゲンは、疾患活動期の炎症と貧血の程度を評価するために重要です。
これらの検査は結果が正常化するかどうかを判定する為に定期的に繰り返されます。遺伝子解析にも少量の血液が必要です。

2.3治療法や根治療法はありますか?
Majeed症候群は治療することはできますが、遺伝性の病気なので完治はしません。

2.4どんな治療法がありますか?
Majeed症候群には標準化された治療法はありません。CRMOは第一選択として非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) で治療されることがほとんどです。理学療法は筋肉の萎縮や関節拘縮を防ぐために重要です。もしCRMOの症状がNSAIDsに反応しなければ、CRMOと皮膚症状のコントロールのためにステロイドが使用されます。しかし、ステロイドを長期使用することによる合併症を考慮すると小児への使用は制限されます。近年、2人の血縁小児患者で抗IL-1製剤が非常に有効であったとの報告があります。先天性赤血球生成不全性貧血(CDA)に対しては必要に応じて輸血が行われます。(Majeed症候群に対して日本では抗IL-1製剤の使用は認可されていません。)

2.5薬物療法の副作用にはどんなものがありますか?
ステロイド は体重増加や、満月様顔貌、気分の変動などの副作用がみられることがあります。もし、ステロイドが長期にわたって処方されることがあれば、成長抑制、骨粗鬆症、高血圧、糖尿病を引き起こす可能性があります。
アナキンラ *による副作用で一番問題となるのは注射部位の疼痛で、これは虫刺されと同程度の痛みがあるといわれています。特に治療開始から数週間は強い痛みを伴うことがあります。Majeed症候群以外の病気に対してアナキンラや カナキヌマブ の治療を受けている患者に感染症が認められています。 *日本ではMajeed症候群に対してアナキンラやカナキヌマブの使用は認可されていません。

2.6治療期間はどのくらいになりますか?
治療は生涯にわたって必要です。

2.7代替治療、補完療法はありますか?
この病気に効果的な補完療法はありません。

2.8どのような定期的な受診・検査が必要ですか?
定期的(少なくとも1年に3回)に小児リウマチ専門医による病勢コントロール評価と、治療の調整を行う必要があります。赤血球の輸血の必要性や炎症の状態を評価する為、定期的に血算や急性期反応物質の検査を行う必要があります。

2.9病気はどのくらい続きますか?
病気は生涯にわたります。しかし、病勢は変動します。

2.10長期的予後(予想される結果や経過)はどのようなものですか?
長期予後は、臨床症状の重篤度、特に赤血球生成不全性貧血の重症度と病気の合併症によって決まります。治療しないままでいると、痛みを繰り返し、慢性貧血もみられ、筋肉の廃用性委縮や拘縮といった合併症のため、生活の質(QOL)は悪くなります。

2.11完全に治る可能性はありますか?
遺伝性の病気のため完治はありません。


3.日常生活

3.1病気のために子どもと家族の日常生活にはどういう影響がありますか?
診断される前より、患者や家族は大きな問題に直面します。
子どもたちの中には、普通の行動もかなり制限されるような骨の変形に対応しなければならない患児もいます。また、生涯にわたって治療が必要であることに対する精神的負担も問題となりえます。患者と両親に対する教育プログラムがこの問題解決に役立ちます。

3.2学校についてはいかがですか?
慢性疾患の子どもにとって教育を受け続ける事は大変重要です。学校の出席に問題が生じるような要素が少しありますので、子どもに対してどのような配慮が必要であるかを教師に説明することが重要です。子どもが学業面で遅れないようにするばかりでなく、大人や同級生たちに受け入れられ、認められるために、両親と教師は子どもが学校の活動に普通に参加出来るように可能な事はすべて行う必要があります。将来的に職業人として社会に出る事は若い患者にとって重要な事であり、それこそが国際的な慢性疾患患者支援の目標の一つです。

3.3スポーツはできますか?
どんな子どもにとっても運動をすることは毎日の生活にとても重要です。治療の目標の一つは、病気の子どもたちにできるだけ普通の生活を送らせ、自分は友達と何も変わらない、と思わせてあげることです。すべての運動は、できるかぎりやらせてあげます。しかし、急性期には運動の制限と安静が必要になることもあります。

3.4食事についてはいかがですか?
普通の食事で構いません。

3.5天候は病気の経過に影響しますか?
天候は病気の経過に影響しません。

3.6予防接種を受けることができますか?
はい、可能です。しかし生ワクチンを受ける場合には主治医に相談しましょう。

3.7 性生活、妊娠、避妊についてはいかがですか?
現時点でこれらの事柄について役に立つ文献的情報はありません。一般的には、他の自己炎症性疾患と同様、生物製剤が胎児に及ぼす影響の可能性を考慮し、予め治療法の選択をおこなえる計画的な妊娠を考慮したほうがよいとされています。


 
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